天理大学客員教授の中江有里氏が特別講演を行いました。

2019.10.30

ニュース

10月17日、国文学国語学科特別講演が開催され、昨年に続き、天理大学客員教授である中江有里(女優/作家)氏が、「ある私小説をめぐって——ハンセン病文学を読んで感じたこと」と題した特別講演を行いました。

中江氏は、まずハンセン病についての正しい理解を深めてもらおうと、最近取り上げられたハンセン病についてのニュースの紹介、DVD上映を行い、続いて、自身が「ハンセン病」を知るきっかけになった北条民雄氏の著書「いのちの初夜」を題材に講演を進めました。

「いのちの初夜」の著者である北条民雄の半生を紐解きながら、小説の主人公を通じて描かれた著者の苦悩について解説した上で、ハンセン病に対する誤解や偏見は「無知が差別を生んだ」と指摘。また、「北条民雄が遺したハンセン病文学は、人間が人間を差別、区別した過去の過ちを作品に遺した。ハンセン病文学を見直すことは、現代にとっても必要ではないか」と述べました。

講演後の質疑応答では、文学部の学生を中心とした聴講者から、ハンセン病文学について積極的に質問する姿が見られました。

中江有里氏 図書館展見学

また、特別講演を終えた中江氏は、天理大学附属天理図書館を訪れ、10月19日から開催される「奈良町 —江戸時代の『観光都市』を巡る—」(~11月10日)を一般公開に先行して見学。図書館司書の説明を受けながら、井原西鶴の「好色一代男」や、松尾芭蕉の「野ざらし紀行」などの関連資料を鑑賞しました。

中江有里氏略歴
女優・作家。1973年大阪府生まれ。法政大学卒。1989年芸能界デビュー、テレビドラマ・映画に多数出演。2002年『納豆ウドン』で第23回NHK大阪ラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。NHK BS2「週刊ブックレビュー」で長年司会を務めた。著書に『結婚写真』(小学館文庫)、『ティンホイッスル』(角川書店)、『ホンのひととき 終わらない読書』(PHP文芸文庫)、『わたしの本棚』(PHP研究所)。現在、フジテレビ系「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。読書に関する講演や、エッセイ、書評も多く手がける。2018年4月、天理大学客員教授に就任。