文化財行政学 特別授業「ベトナムの文化遺産の現状と課題」

2022.07.22

ニュース

7月18日、歴史文化学科の専攻科目「文化財行政学」(金曜1限、42H教室、桑原担当)で、「ベトナムの文化遺産の現状と課題」と題した特別授業が行われ、歴史文化学科の日本人学生、国際学部日本研究コースのベトナム人留学生を合わせた28名が、ゲストスピーカーの講義に耳を傾けました。

ゲストスピーカーの鈴木朋美さんは、ベトナム考古学を研究するとともに、現在、奈良県立橿原考古学研究所の企画学芸課主任研究員として、奈良県内の遺跡調査や研究、文化財の公開活用に関わる業務に従事しておられます。

今回の特別授業では、ベトナムの地理と自然を概観したあと、文化遺産に関する法規文書の歴史が紹介され、鈴木さん自身の体験に基づいて、ベトナムの文化遺産の現状と課題が詳しく説明されました。

授業を通して、受講生たちは、東南アジアの一員であり美しい海に面したベトナムでは先史時代から活発な人間活動があり、その証が遺跡として現代まで引き継がれてきたこと、南北に長い国土に多様な自然環境に囲まれながら数々の文化遺産が眠っていることを学びました。また、ベトナムの社会環境の中で文化遺産がどのように考えられ、扱われているかについて、日本と比較しながら理解を深めました。

受講生コメント

「今回、自分の国(ベトナム)の文化遺産について知識を広げることができました。ベトナムと日本の文化遺産について、もっと研究したいと思います。今回の授業で、日本の学生のみなさんにベトナムのことを理解してもらえたので、とても嬉しいです。文化や歴史を通して、日本に留学している外国から来た私たちと日本のみなさんとの交流になったと思います。」

「私はベトナム人ですが、私の国の文化について多くを学ぶ機会がありませんでした。今回の授業で、ベトナムの文化について理解することができました。」

「文化遺産は、経済、文化、社会など、多くの側面で、(私たち)ベトナム民族にとって重要な役割を持っています。観光発展のための素晴らしい資源になっていることを強調する必要があります。」

「文化遺産は世界からの注目に応えるために維持し続けなければならないと思います。(私の国の)ベトナムには扱いがデリケートな文化遺産やトピックがあり、日本より複雑な状況下にあることがわかりました。」

「遺産のあるところに利益があるという考えは捨てなければならない時に来ていると思いました。(私の国である)ベトナムの文化遺産は、先祖が子孫のために残した皆のものであり、保存すべきものであると考えなければならないと思います。」

「ベトナムについて何も知りませんでしたが、今回、知ることができ、ベトナムを見てみたいと思いました。ベトナムと奈良は、深いところを見ると、国境を越えて共通する部分があると感じました。」

「日本とは違ってダイナミックな遺跡や民族が織り交ざるベトナムの文化に興味をひかれました。ネフライト製の耳飾りなど、サーフィン文化の甕棺の副葬品がとても綺麗で驚きました。」

「チャンパ王国が仏教を通して、日本・奈良と関りがあったのには驚きました。扶南と奈良は関りがあることを学びました。」

「チャーキュウ城はフランス統治時代に調査されたことを知りました。聖なる山と呼ばれる場所の写真が神秘的で、初代王都チャーキュウ城の調査が印象に残りました。」

「ベトナムについて詳しく知ることができ、興味が出ました。文化遺産法による遺物・遺跡発見時の対処に驚き、現状や問題点を見つけることができました。」

「ベトナムでは遺跡の存在が周知されておらず、法整備が必ずしも十分ではないということがわかりました。ベトナムの遺跡は、人々の生活に近すぎるために破壊されているのが残念だと感じました。」

「ベトナムの遺跡に課題があるのは、その場所が環境や立地がよく、昔も今も人々が利用しているからだと思いました。遺物が売買されている現状は、変えなければいけないと思います。私利私益のための売買は法律で禁止されているものの、人々の身近に多くの遺跡・遺物があり、発見された貴重な貴金属を販売する人々もいることを知りました。ベトナムの文化遺産法の内容に関心を持ちました。」

「貴重な文化財が金銭的な問題で保存ができないのはもどかしいです。(タンロン遺跡など)世界遺産は登録がゴールではなく、その維持が重要だと感じました。」

「「環境・人・金が充実していないと文化遺産は保持できない。」、「世界遺産に登録されて終わりでなく、そこから価値をキープしないと意味がない」という言葉は、忘れてはいけないと思いました。」