UNITY OF MINDS
その熱戦の、舞台裏。天理スポーツを支えるひと

2018.11.13

アメフト

永田碧 体育学部4年生 アメリカンフットボール部マネージャー

TVやスマートフォンを覗くと、今日もスポーツの話題で溢れています。

スーパープレイで魅了する大リーグ選手の姿や、春高バレーで涙を流すバレーボール選手、引退を決めたフィギュアスケーター。

年齢も性別も関係なく、彼や彼女たちの競技への真摯な姿勢はわたしたちを勇気づけてくれます。

そんな勇猛果敢な選手たちの背後、カメラにはなかなかおさまらない場所に、今日も舞台裏から選手たちを支える誰かの存在があります。

高校生のとき、スポーツは“する側”。
トレーナーの仕事に興味があって、マネージャーになることを決めた。

永田碧さんは、体育学部の4年生。アメリカンフットボール部のマネージャーです。

選手たちの練習のサポートをしながら、選手が怪我をした際にテーピングを行うなど、トレーナーとしての役割も兼任しています。

午後5時、部室を訪ねると、体格の良い男子選手たちが熱心にモニターを覗き込んでいます。熱気のなかで目を惹く、ジャージ姿の永田さんを見つけました。

今までも、マネージャーの経験があったのでしょうか。

「スポーツはずっと、“する側”だったんです。高校の時は、ストリートダンスに取り組んでいました」

 

実は永田さんは、ダンスの強豪校、大阪府の今宮高校出身。天理大学の公募推薦では特技のダンスで合格し入学しました。

 

「やりたいと思ったことは全部やる!という性格で、大学でも部活と掛け持ちしながら趣味としてダンスをサークルで続けていました。またドイツへのスポーツ交流実習にも二年連続で参加し、ドイツと日本のダンスの違いなども肌で感じました。卒論のテーマも、『体育教育におけるダンス』です」

 

ダンスが大好きな永田さんが、アメリカンフットボールという全く異なるジャンルのスポーツに、マネージャーいう“裏方”として携わるようになったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

 

「大学でもダンスを続けようかと思ったのですが、天理大学のダンス部は、創作ダンスで、私が取り組んできたジャンルとは違うものでした。それなら、思い切って違うスポーツを始めてみようかなと思いました。

新しいスポーツに変えることも含めて色々考えたのですが、トレーナーの仕事に興味があったことから、アメフト部のマネージャーをやってみようと決めました。

それに、天理大学のアメリカンフットボールって、選手の皆も、大学から始める人が多いんです。この競技なら、皆で同じスタートから始められる。それも魅力でした」

勝ち負けに自分の努力が直に結びつくわけではない、そのもどかしさ。
それでも、「サポート側に回ったことで成長できた」

スポーツをする側だった自分がマネージャーとなり、裏方となる。

その経験を通じて、永田さんは周囲を観察することの大切さを学んだと言います。

「何よりも第一に相手のことを考えることがすごく大事だなと気づきました。高校生の頃のダンス部でも副キャプテンを務めていたので、周りへの指示だしや、一人一人の能力を見極めることは苦手ではありませんでしたが、マネージャーを務めたことで、能力が高まったと思っています。

今は選手が23人、スタッフは私を含めて3人ですが、一人一人の性格に良いところがあると感じます。良いところからお互い刺激を受けて成長し合えていると思っています」

また、選手に施すテーピングやマッサージには、体育学部の必修授業で学んだ知識を生かしながら、先輩トレーナーやOBOGから教わっているそうです。

しかし、裏方のサポートにやりがいを感じながら、悔しいこともあるとのこと。

 

「勝ち負けに私たちスタッフの努力が関係するとはいっても、試合の結果に直に結びつくわけではない。そこが、すごくもどかしい。裏からサポートする自分がどういった風に努力をすれば良いかわからなくて。でも、そうした経験を通じて、今までする側では気づけなかったことに、マネージャーとしてサポート側に回ったことで沢山気付けました。四年間この仕事をやり遂げられたことは自分の中ですごく大きいと思っています」

 

そんな永田さんの将来の夢は、高校で体育の教員になることだそうです。

 

「天理大学の体育学部は海外とはかけはなれているように思えますが、実は国際性のある制度が多くあります。

私もスポーツ交流実習で赴いたドイツで、直感で動くドイツの学生と、考えてから動く日本の学生の違いを感じました。このような海外での経験などを生かし、生徒をしっかりと観察し、それぞれに合った方法を見極めて選択していけるようなチカラを身につけた教員になりたいと思っています」

UNITY OF MINDS ――ともに感動しよう

午後6時過ぎ、暗くなったアメリカンフットボールの競技場をライトが照らしています。

ボールが飛び交い、選手たちがぶつかり合うそのフィールドを、永田さんが真剣に見つめています。確かに、彼女にパスが回ってくることはありません。でも練習や試合で、弧を描き、得点に結びついたその一投は、スタッフやマネージャー、OBOG、トレーナー――選手の後ろ側にいる、選手をサポートする誰かからの、長いパスの連続の結果なのかもしれません。

 

スポーツをするひとも、観るひとも、支えるひとも。

その熱戦の舞台裏では、今日もドラマが繰り広げられています。