アヌンマンクム・ポインダ。古地図を持ち、街に出よう。

THE STORIES #039

アヌンマンクム・ポインダ。古地図を持ち、街に出よう。

外国語学科韓国・朝鮮語専攻・教授

長森 美信さん

「本を読むのは好きでしたが、時間さえあればアルバイトをして、貯めたお金で一人旅をしていました。

オートバイに寝袋とテントを積んで、日本全国を回りました。二十歳の時には、自転車でオーストリアを横断しました。

普段から地図を眺めながら、ここには何があるんだろう、どんな人たちが住んでいるんだろう、と想像を巡らせて楽しむ癖がつきました」

大学時代についてそう話す、長森 美信さん(国際学部外国語学科韓国・朝鮮語専攻・教授)。幼い頃から歴史に興味があり、大学で東洋史を専攻した長森さんは、図書館で手に取った朝鮮史の本に衝撃を受け、朝鮮史関係の本を読むことに熱中したそうです。

「学部生時代に一番面白いけれど、よく分からなかったのが、朝鮮(李朝)時代のことだった。そこで、大学院では朝鮮時代のことを研究したいと思いました。指導教授から、いわゆる“鎖国”の時代に、中国・朝鮮・日本・東南アジア諸地域の間で、船に乗って漂流・漂着する人たちがたくさんいて、そこで様々な交流、外交が生まれていたという話を聞き、人と物の移動史(交通史)に興味を持ちました」

数百年前の古地図を何年もの間、部屋の中でじっと眺めていても分からなかったことや、史料を読んで分からなかったことが、現地を訪れ、現地の人と話をすると、一瞬で分かることがある。

そう話す長森さんの研究は、一言で表すと「文献とフィールドの相乗効果」。 大学生の頃、地図を片手に一人旅をした経験が、研究に影響しています。

現在、長森さんが最も熱中しているのは、「歴史の現場歩き」。

関西にある朝鮮関連の史跡を、ゼミや授業の学生たちと一緒に歩いているそうです。

「2016年は、「日本のなかの韓国文化」・「韓国のなかの日本」学生調査団という企画が、外務省の交流事業JENESYS2016に採択され、韓国国立釜山大学と天理大学の学生と一緒に、近畿圏内の日韓関連史跡を歩きました。

また、その前年には同じく外務省の支援を得て、「日韓学生通信使」という交流事業を行いました」

そんな長森さんのモットーは、「アヌンマンクム・ポインダ(아는만큼 보인다)」

知っている分だけ見える、という意味の韓国語です。

「その背景を知っている人と知らない人とでは、見え方が違う。専門家と素人とでは、同じ建物や仏像、絵画を見ても、感じるところが違います。同じ場所を訪れるにしても、その場所に関する知識を持ってから訪れると良いと思います」

「日本のなかの韓国文化」・「韓国のなかの日本」学生調査団

外務省主催の国際交流事業「JENESYS2016」に応募し、昨年に続いて採択された「天理大学・釜山大学校『日本のなかの韓国文化』学生調査団・近畿編」(実施機関:公益財団法人日韓文化交流基金、実施団体:天理大学韓国・朝鮮語専攻)が、総勢42人(釜山大学校25人、天理大学17人)が参加して、8月24日から8月30日の日程で行われた。