文化が混ざり合うことは、素晴らしい。ドイツで学んだ多様性の大切さ。

THE STORIES #051

文化が混ざり合うことは、素晴らしい。ドイツで学んだ多様性の大切さ。

国際学部 地域文化学科

金 諭史さん

「初めてドイツに憧れを持ったのは、2002年のサッカー日韓共催W杯です。より深い意味で関心を持ったのは、中学生になりレマルク作の『西部戦線異常なし』を読んだとき。こんな名作を書いた作者の国はどんなところだろう?と、惹きつけられて。
天理大学に進学したのは、留学も含め、ドイツ語を学ぶ環境に非常に恵まれていると思ったからです。留学先も、ドイツ語の先生がアドバイスしてくれました」

そう話す、金諭史さん。天理大学の交換留学制度を利用し、ドイツのマールブルク大学で2年間の留学を経験しました。
留学してまず驚かされたのは、現地の学生たちの“タフさ”でした。

「勉強するにしても、ダラダラと長時間やらないんですよ。勤勉で優秀、でも友人と交流したり、遊んだりすることもしっかり楽しんでいる。年齢層もさまざまで、主体的に学びたいから大学に来ているのだという強い意志を感じました」

切り替えがうまく意見を突き詰めていく、姿勢に自分の勉強不足を反省する一方、滞在中には“生の歴史”を学ぶ瞬間が多くあったそうです。

「老人ホームでお手伝いをするようになり、高齢の方と話す機会が増えました。僕の未熟なドイツ語でもゆっくり聞いてくれるので色々な話を交わすようになり、一部の方が第二次世界大戦中の話を聞かせてくれるようになりました。
でも、そうした話の一方で、部屋の片隅で押し黙って、何も話したがらない人も必ずいました。
マールブルクにはヒトラーがユダヤ人を虐殺した“水晶の夜”で破壊されたシナゴーグもあり、また、僕の友達のなかには、アフガニスタンやイランなど、戦争・紛争を理由にドイツに移民した背景を持つ学生も多くいました。日々の生活で、歴史の影を感じました」

長期留学で、多くのことに気づいたという金さん。多様なバックグラウンドを持つ友人との出会いも、彼に大きな影響を与えたそうです。

「留学中は、同じ国籍でまとまりがちです。ただ、僕自身も韓国系。あえてマイノリティーと呼ばれる人や、色々な地域出身の学生と交流するように心がけました。ムスリムの友人も多くできたのですが、彼らの他者を助けようとする姿勢には、いつも心を動かされました。
ラマダンひとつをとっても、彼らは貧しい人の立場を経験するために行います。
自分の極限の状態のときほど人は優しくなれる、宗教にはこんな側面があるんだと気付かされました」

そんな金さんの将来の夢は、日本でゲストハウスを開くことだそうです。

「ドイツにいるとき、毎日が本当に楽しかった。
誰かと会ったとき、この人は一体どこからやってきて、どんな背景でここにいるんだろうと考え、最初は違いにばかり気になりました。でも、食事をしたり、お酒を飲んだりして一緒に過ごしたら、同じ人間だって気付いたんです。
歴史って人が混ざって行くことだと思うんです。
そして、文化や人が混ざり合って行くことは、素晴らしいと思う。
将来は日本でゲストハウスを開いて、お客さん同士が友達同士のように集えるような、そんな場所を提供できたらいいなと思っています」